日本は医療の発達や生活環境の進歩により、今や「長寿の国」とも言われ、平均寿命ランキングでは、常に上位を占めています。
しかし一方で、歯の寿命は先進国の中でも「最低クラス」と言われており、人の寿命に対して、歯の寿命が追いついていないのが現状です。歯科は保険が適用される分野であるにも関わらず、一体なぜ歯の寿命が短いのか?という問題を今回は取り上げていきたいと思います。
日本人の歯の寿命
歯の本数は親知らずを含めると、全部で32本あります。
年を重ねると共に、歯の本数は徐々に減少していき、40代になる頃では平均で27.5本と言われています。40代を超えると、歯を失う本数はどんどん加速し、50代で平均24.8本、60代で平均21.3本、70代では、およそ半分を下回る15.2本、80代ではなんと、たったの8.9本しか残らないというデータがあります。厚生労働省の調査によると、歯の平均寿命は約50~65年と短く、日本人の平均寿命は男性で80歳、女性で87歳と言われており、歯の寿命が追いついていません。歯の中でも、奥歯の寿命が最も短く、前歯の寿命よりも10年ほど短いと言われています。
また、食べ物を美味しく食べるために必要な歯の本数は、フランスパン・スルメイカ・せんべいなどの固い食べ物であれば18~28本、レンコンやきんぴらゴボウなどの、少し歯ごたえのあるものでしたら17~6本、うどんやお粥などの軟らかい食べ物であれば5本以下でも食べる事ができます。歯の本数が少なくなっていくにつれ、自然と軟らかい食べ物を好むようになり、軟らかいものばかり食べると噛む力も衰え、栄養も偏ってしまうため、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病を引き起こしやすくなります。それだけでなく、咀嚼回数が減る事から、脳への刺激が減少し、認知症へと発展するケースも考えられます。
他国の歯の寿命
日本人の歯の寿命は短く、80代にもなれば残った歯の数は、平均で8.9本とトータル本数の3分の1を下回っています。では他国の歯の寿命はどのようになってるのでしょうか。
歯の寿命が一番長い国は、世界でも有名な歯科予防先進国でもあるスウェーデンであり、80代での歯の残数は、なんと20本と、日本人の2倍の数も残ってるとのデータがあります。実は「予防歯科」や「予防メンテナンス」という言葉はスウェーデンが発祥と言われるほど、虫歯や歯周病予防について国民の意識が非常に高く、先進国の中でも特に虫歯や歯周病の罹患率が少ないと言われています。スウェーデンに続き、80代で歯の残数が多い国をランキングで見て行くと、米国で平均17本、英国で平均15本というデータがあります。一体なぜ、ここまで大きな差が出てしまうのかというと、医療の進歩や技術の差ではなく、虫歯や歯周病予防に対する意識の違いと言えるでしょう。
「虫歯や歯周病などになってしまってから、治療を受けるため歯医者へ行く」という考えが先行する日本人の考えと、「健康な歯を少しでも長く保つように歯医者へ通う」というスウェーデン人の歯医者に対する考え方に大きな違いがあります。実際に、スウェーデンの定期検診の受診率や歯のメンテナンスのために歯医者を受診する人の割合は平均でおよそ9割を占めており、米国でも8割、英国も7割と、歯の長寿国である多くの人々が予防に対して意識が高いと言えるでしょう。
歯を失うことで一緒に失われるもの
歯を失うことで不便になるものといえば、容易に想像できるもので、「食べ物が食べにくくなる」、「発音がしにくくなる」、審美的な面では「見た目が悪くなる」ということではないでしょうか。この三点はごもっともですが、実は身体にもダイレクトに悪影響を及ぼします。
前章でも述べましたが、歯の本数が減ることにより、摂取する栄養バランスが大きく崩れ、食事も取りにくいため食べる量も減少し、栄養不足が起こります。また、歯が少なくなるにつれ、軟らかい食べ物を好むようになり、咀嚼回数が減り脳への刺激も減少することから認知症に繋がるケースもあります。さらに軟らかい食べ物には炭水化物が多く含まれる食材が多く、必然的に糖質の摂取量が増える傾向にあるため、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病にも繋がる可能性が考えられるでしょう。歯を失うことで、このように身体全体にまで影響を及ぼすこととなり、食べられるものに制限がかかり、体力も低下すれば、外出することも億劫になってしまう方が多くいるようです。
実際に、80代で20本ほど歯が残っている方は、旅行に行ったり、趣味やスポーツで体を動かしたり、お友達との食事会に参加するなどと、とてもアクティブに活動されている方が多い傾向にあります。しかし一方で、そうでない方は家でテレビを見る割合が増えるなど、外との関わりを持つ方が減っていることが調査の結果でわかっています。
このように歯を失うことは想像以上に普段の生活や人生に深く関わり、一緒に失われるものは予想以上にとても多いと言えるでしょう。
自分の歯の寿命を守れるのは、自分しかいません。
歯周病や虫歯の原因となるプラーク(歯垢)は、磨き残しにより発生します。特に歯と歯肉の境目にあるプラークは、日頃の歯磨きだけで完全に除去するのは難しく、どれだけ頑張って磨いても半分程度しか除去できないと言われています。この放置されたプラークが口腔疾患の引き金となるので、定期的にクリーニングを行うなど、自分では除去し切れない部分をしっかりきれいにしてもらうことが大切です。
また、自分に合った歯ブラシの選び方や磨き方、歯間ブラシの活用方法などをプロから学び、セルフケアの質を高めていくことも大切と言えるでしょう。健康な将来を考え、80歳になっても自分の歯で美味しく食事をしたり、人生を楽しむためにも、大分県の歯医者で定期検診を受けたり、予防メンテナンスを日常に取り入れてみてはいかがでしょうか。