「不定愁訴(ふていしゅうそ)」というワードを聞いたことはありますか?不定愁訴とは頭が重く感じたり、疲れがとれない、何となく体調が優れないなどの自覚症状はあっても検査をしたら原因となる病気が見つからない身体の不調のことを言います。実は、歯列矯正の治療中や治療が終わった頃に、この不定愁訴を訴える人は少なくありません。
一体全体、不定愁訴は歯列矯正とどのような関係があるのか、はたまた解決策はあるのか、ご紹介します。
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不定愁訴について
不定愁訴とは自覚症状があっても、検査では特に異常が見つからない身体の不調のことです。不定愁訴は自律神経失調症などと診断されることもありますが、自律神経失調症も明確な発症原因がわかっているわけではありません。不定愁訴は、肩や頭が重い、疲れが取れず身体がだるい…と身体に痛みや倦怠感などの不調が出る場合や、突然落ち込んだり、憂鬱な気分になるなど精神面に現れることもあります。このような慢性的な不調が続くことで、日常生活に支障に感じることも多いのが特徴です。
不定愁訴の症状
歯の症状
歯ぎしり、食いしばり、詰め物が取れやすい、歯が折れる、歯が痛い、しみる
口腔内の症状
味覚障害、開口障害,閉口障害、不快感、口腔内が乾く、舌が痛い
顎の症状
顎関節のカクンカクンとした音、顎や舌の運動障害、関節摩擦音、頬の筋肉痛
喉の症状
咽頭炎、非炎症性の喉の痛み、周期的な咳、声の変化・異常、上手く飲み込めない など
頭部の症状
頭が重い・痛い、偏頭痛、前頭洞、上顎洞痛、後頭部痛、頭皮の擦過痛、かゆみ、額・こめかみの痛み
首の症状
肩こり、肩の痛み、首が回らない、筋肉の倦怠感
目の症状
角膜の出血、出目、眼底痛、僅かな光で眩しくなる など
鼻の症状
鼻水、鼻づまり、上顎洞や鼻の奥に違和感を感じる など
耳の症状
耳鳴り、聴力低下、非炎症性の耳の痛み、かゆみ、めまい
手の症状
腕や肩の屈曲障害、腕と指の痺れ、痛み など
足の症状
しびれ、膝痛、腰痛、関節痛、屈曲障害
精神の症状
やる気が出ない、集中力が続かない、悲観的になる、落ち込む、認知症、慢性疲労症候群 など
歯列矯正と不定愁訴の関係
人間の頭の重さは体重の約10%程あると言われており、ボーリングのボールに例えると12ポンド前後のボール1つ分が頸椎の上に乗っている計算になります。顎はそのバランスを取る役目もあり、顎を動かす筋肉のほとんどが脳頭蓋や頸椎についています。下顎や上顎が歪むと頭が傾き、背骨までも歪んでしまい、脳や脊髄の働きも歪むことに繋がるのです。このような歪みから神経や血管が圧迫されることで様々な症状が出ると考えられています。
また顎のズレや噛み合わせの歪みが原因の他に、歯の大きさや形、歯が生えている位置も一つ一つの歯の噛み合わせ具合や形、隣の歯との接触具合も考えられる原因の一つです。不定愁訴は歯列矯正が原因で起こると考えられることが多いですが、実際は歯列矯正そのものではなく、顎関節症の症状として不定愁訴があらわれている可能性が高いと考えられています。顎関節症の治療として歯列矯正をしている際に不定愁訴の症状が出てきたならば、それは歯列矯正が原因ではなく、顎関節症が原因である症状だと考えた方がいいでしょう。顎関節症が関係しているとされる不定愁訴の症状は咳、痰、頭痛、肩こり、めまい、倦怠感、手の痺れ、耳鳴り、イライラ、抑うつ、睡眠障害など全身に不調が出ることがわかっています。しかし顎関節症を患った方が必ずしも不定愁訴を伴うわけではなく、不定愁訴の全てが歯列矯正に原因があるわけではありません。
別のケースでは、口の中の詰め物が原因で不定愁訴が発生しているケースもあります。
保険が適用される「銀歯」と言われる詰め物は、実際は銀ではなく金銀パラジウム合金というもので出来ており、この金銀パラジウム合金は金属が溶けて隙間ができてしまい、そこに虫歯が出来やすくなったり、金属アレルギーの症状が現れるケースもあります。また、肝臓や腎臓などに有害な重金属が蓄積したり、歯茎に金属が沈着するなどの影響を及ぼす可能性があります。その他にも疲れやイライラしたり、不眠等の問題が現れるなど不定愁訴の症状を銀歯の詰め物が引き起こしている可能性があるのです。中には、詰め物を違う素材の物に取り替えたり、高さを調整するだけでも、不定愁訴の改善につながることがあります。
さらに抜歯が不定愁訴の原因となっていることがあります。
抜歯によって噛み合わせが悪くなると、自律神経である交感神経と副交感神経の働きに狂いが生じてしまい、リラックスしなければならない時に交感神経が活発になり、心拍数が上がったりすることがわかっています。このようなことから親知らずや小臼を抜歯すると、鬱の症状が発生することがあると言われています。
歯列矯正と不定愁訴の因果関係は、色々なところで話を聞くことがあるかと思いますが、必ずしも歯列矯正が原因であるとは限りません。本来、歯列矯正は、不正咬合を改善させるために行うのですが、近年では芸能人のような美しい歯並びを手に入れたいと審美性を求めて歯列矯正を決断する人は少なくありません。しかし審美性ばかりを優先させてしまうと、正しい噛み合わせを無視した治療となったり、噛み合わせによる不調が出てしまう場合も大いに考えられます。
審美性ばかりを求めるのではなく、健康的な噛み合わせを作ることを第一に考え、信頼できる歯科医院に相談しましょう。