インプラント矯正とは矯正治療用につくられた特殊なインプラントを一時的に顎の骨に埋め込み、歯を動かすための固定源として使用することにより今までの矯正治療では難しかった歯の動きを可能とし、確実な治療結果や、治療期間の短縮やなどを可能にした矯正方法です。
インプラント矯正のメリットは、矯正治療の幅が広がり、普通の矯正治療よりも大きく歯を動かすことができるため、出歯の場合でもしっかりと歯を内側に動かすことができます。また、治療期間が短くなる可能性も高くなり、さらには従来では抜歯が必要な症例であったり手術が必要な症例でも、それらを回避することが可能となる場合があります。その他にも、装置の使用に関して、患者さんの協力度合いに左右されることなく、確実な治療結果が得られるという点もあります。固定源と呼ばれている錨のような働きをしている歯が動いてしまうなどのロスを防ぐために従来使われていた取り外し式のヘッドギアー等の装置が不要となり、患者さんの負担が軽減します。
さらに従来では外科手術が必要とされていた症状であっても、手術をすることなく治療が可能となるケースが増え、矯正治療のための抜歯が不要となるケースも増えました。
しかしながら、インプラントと聞くと身構えてしまう方も多いのではないでしょうか。インプラントは顎の骨にアンカースクリュー(ネジ)を埋め込む必要があり、そう聞くと患者さんが処置を過剰に怖がってしまう場合がありますが、最初は怖がっていた患者さんでも、実際に処置をすると、案外痛くなかったと言う人がほとんどです。
メリットも多いですが、もちろんデメリットもあります。
アンカースクリュー(ネジ)がうまくつかずにグラグラしてしまうことがあり、約1割の頻度でグラグラになって使えない状況になってしまうことがあります。使えなくなったアンカースクリューは抜き取り、患者さんの同意の上でつけ直します。
その他にも、感染すると膿んだり、腫れたてしまったりすることがあります。また腫れがひどくなると、埋め込んだインプラントが不安定になり、場合によっては固定しなおす必要があります。
インプラント矯正の手順について
矯正用のアンカースクリューと呼ばれるねじの埋め込みは1本あたり5分から10分程度で終わり、その後の痛みも少ない場合が多いです。動かし終わった後は、スクリューを抜きますが、ほとんどの場合に麻酔は必要ありません。
以前は粘膜を切開し、ドリルで骨に穴をあけた後、スクリューを埋め込み縫合すると言った口腔外科的な処置が必要でしたが、現在はの非常に簡単で便利になっています。
まず、レントゲンを撮り、それ等の資料からスクリューを埋め込む部位や方向の検討を行います。それが終われば、次に消毒、少量の麻酔を行います。 スクリューが歯根に近い場合、埋め込み時に違和感が生じます。その場合は方向を変えて入れ直しをしますが、このような感覚がなくならないように、あまりしっかりと麻酔は行わず、表面の粘膜が痛くない程度の麻酔の量で十分です。
切開等は行わず、アンカースクリューをドライバーで入れていきます。 いわゆる木ネジと同じ要領で、ほとんど出血はしません。しかし、抵抗が強かったりする場合は、スクリューが破折してしまう危険性があるので、その場合はドリルで誘導孔を形成することがあります。
そしてしっかりと植立されたことを確認し、消毒します。 すぐに矯正力をかける場合もあれば、ある程度の治癒期間を設けてから矯正力をかける場合もあります。
その後、抗生物質や鎮痛剤の処方を行い、清掃等の指導を行います。
インプラント矯正の痛みは、意外に思われるかもしれませんが、処置に痛みを感じることはあまりなく、処置の際の出血もほとんどありません。歯を抜いたり削ったりする時の様な痛みを感じることもなく、処置が終わった後もあまり痛みを感じることはないでしょう。
処置の前に少量の麻酔を行います。麻酔の効果が無くなってくると多少痛みを感じますので、必要であれば鎮痛剤を飲んでいただきます。アンカースクリューという埋め込んだねじの周囲の歯肉や粘膜に多少の違和感が生じることがありますが、数日後には慣れます。
インプラント矯正は治療期間を短縮することができ、治療の確実性を高めるだけでなく、治療のクオリティーも上げることができます。また様々な理由で治療期間が長くなってしまっている患者さんでも、このインプラント矯正に途中から切り替えることで、今後の治療期間を短縮できる可能性もあります。
アンカースクリューは通常6ヵ月~1年程度使用し、必要が無くなり次第アンカースクリューは抜き取ります。その際に必要に応じて少量の麻酔を使います。
また、抜き取った場所の歯肉は数日で治り、その後全くと言っていいほどに目立たなくなります。その歯肉の下の骨も1ヶ月程度で再生修復され、抜き取る場合もほとんど痛みを感じることはありません。インプラント矯正は、マルチブラケット装置に矯正用のアンカースクリュー(ネジ)を応用することで、患者さんの様々な負担を軽減できるだけでなく、従来の治療法よりも良い治療結果が得やすくなりました。よりよい矯正治療を行うための有効な方法として、今では世界的に普及が進んできている注目の治療法とも言えます。