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インフルエンザと歯磨き

冬になるとインフルエンザの流行シーズンを迎えます。インフルエンザは、お子さまや高齢者、免疫力が低下した闘病中の患者さまにとって、命を脅やかす最も重い感染症です。

またインフルエンザの感染力は強く、ご自身がかからないようにすることはもちろん、ご家族や周囲の人達にも移さないよう配慮し、しっかり予防をすることが大切です。

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インフルエンザの予防

インフルエンザは、他人の咳やくしゃみなどの飛沫を吸い込んだり、ウイルスが付着したものに触れたりすることで、鼻や喉などの気道の粘膜に付着し、感染してしまいます。細胞内に侵入したウイルスは、ノイラミニダーゼと呼ばれるたんぱく質を溶かす酵素の働きで細胞外に放出され、増殖して感染を拡大していきます。インフルエンザの予防の第一歩は、インフルエンザワクチンの接種です。インフルエンザワクチンは、重症化を防ぐ効果が認められています。しかし感染や発症を防ぐ効果は十分とはいえないため、ワクチンを接種したうえで、外出時には、ウイルスに触れた手で口や鼻に触れ感染を防ぐためにマスクを着用し、外出先から戻ったら石鹸で手洗い、うがいをするといいでしょう。

また近年、インフルエンザの予防に歯みがきや口腔ケアをしっかりと行い、口や歯を清潔に保つことが注目されています。

インフルエンザ予防と歯磨きの関係

歯みがきや口腔ケアを怠っていたり、磨き残しなどがあったりすると、虫歯や歯周病の原因となることは、周知の事実かと思います。虫歯や歯周病は、食べカスや磨き残しが原因で発生する歯垢(プラーク)が原因です。この歯垢は細菌の塊でできており、肺炎や気管支炎などの発症や重症化にかかわる肺炎球菌やインフルエンザ菌のほか、重い感染症の原因となる細菌も含まれていると言われています。感染症の原因となる細菌は、プロテアーゼと呼ばれる酵素を放出し、インフルエンザウイルスが気道の粘膜から細胞に侵入しやすくする特性をもっています。

よって、口腔内を不潔なまま放置してしまうと、プロテアーゼの量が増え、インフルエンザの発症や重症化を招きやすくなることに繋がります。実際に、歯科医院で口腔ケアを受けた人のインフルエンザの発症率が、プロによる口腔ケアを受けてない人の10分の1になったとの報告があがっています。これはプロが口腔ケアを行うことで、細菌数が減り、プロテアーゼとノイラミニダーゼのはたらきが低下していることがわかっています。

口腔ケアとは

お口の健康と体の健康は一見関係のないことのように感じるかもしれませんが、お口健康は体の健康につながっています。口腔機能が低下すると、「噛んで味わう」「飲み込む」といった動作をスムーズに行えなくなり、栄養を十分に摂取しにくくなります。栄養不足の状態が続くことで運動機能の低下や認知症の進行、摂食障害につながることが考えられます。口腔ケアは、歯周病などを予防するだけでなく、摂食トレーニングや誤嚥性肺炎の予防など高齢者の機能回復にも影響をあたえます。

口腔ケアには「セルフケア」と「プロフェッショナルケア」の二つがあります。セルフケアとは、歯ブラシやデンタルフロス、歯間ブラシなどを使ってご自身で口腔内を清潔に保つことを言い、プロフェッショナルケアとは、歯科医や歯科衛生士などのプロが口の中と全身の状態を見て、より専門的なケアとアドバイスを行うことを言います。口腔内と体の健康を保つには、セルフケアとプロフェッショナルケアの両方を取り入れる方がいいでしょう。

口腔ケアにより得られるメリット

唾液の分泌の促進

口腔ケアを行い、口の中を清潔にすることで、唾液の分泌が促進されます。反対に、食べカスが歯にくっついていたり、細菌で口腔内が清潔でない状態では、唾液が出にくくなり口の中が乾燥してしまいます。

また、歯ブラシなどで「唾液腺」を刺激することで、唾液腺の働きを活発にし、分泌量を増やします。唾液には歯やお口の粘膜を保護したり、虫歯や歯周病を予防したりする役割があるため、唾液量を増やすことは、口腔ケアにおいて重要なポイントなのです。

口腔機能低下の防止

高齢になるにつれて、噛んで飲み込んだり、話したり、表情を作るなどといった口腔機能全般が低下しやすくなります。口腔機能が衰えると、栄養が十分に摂取できなくなり、免疫力の低下や摂食障害につながります。口腔ケアを通して体の健康の回復が期待できます。

 感染症や発熱の予防

お口の中にいる細菌には、食中毒を引き起こす細菌や、全身疾患の原因となる細菌も存在しています。不衛生な口腔内は、菌が住みやすくなり、感染症や肺炎にかかりやすくなることが考えられるます。つまり口腔ケアには、感染症や発熱の予防という効果も期待できます。

誤嚥性肺炎の予防

嚥下(えんげ)という、食べ物を飲み込む機能が衰えると、食べ物や唾液が気管に入ってしまうことがあります。このとき、口腔内の細菌が肺に入って起こるのが「誤嚥性肺炎」です。誤嚥性肺炎は高齢者の命を脅やかす可能性がある怖い病気なので、しっかり予防することをお勧めします。

認知症の予防

食べ物をよく噛んで食べるという行為は、脳に刺激を与え、中枢神経を活性化し認知症を予防するといわれています。高齢の方で、歯が20本以上残っている人に比べ、歯が少なく、入れ歯も使っていない人は、認知症になるリスクがおよそ2倍近く高くなるという調査結果も出ています。

日ごろからしっかりと歯磨きや口腔ケアを行うことでインフルエンザの発症率を10分の1に減らせる可能性があることが分かったという事実はとても大きいのではないでしょうか。

信頼のおける歯科医院で口腔ケアを受け、ブラッシング指導について教えてもらうことも、インフルエンザの予防につながります。またお口の健康は全身の健康に繋がっているため、健康な人生を送るためにも口腔ケアはかかせません。それだけでなく、虫歯や歯周病を予防することで生活習慣病の予防にもなります。

これほどのメリットが挙げられる口腔ケアを受けてみてはいかがでしょうか。

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