日本という国は世界の中でもトップクラスを誇る長寿国です。現在の日本人の平均寿命は、女性は86.8歳、男性は80.5歳まで延びています。しかし歯の寿命はどうでしょう?高齢になるにつれて入れ歯をする印象をお持ちの方も多いのではないでしょうか。また幼い時に、おじいちゃんやおばあちゃんが入れ歯を外しているところを見たことがある人も少なくはないでしょう。
しかし、いくつであろうと、ケアや予防をしっかりと行うことによって一生歯を残すことが出来ます。
ここでは80歳で20本の歯を残す「8020運動」について紹介したいと思います。
8020運動とは?
1989年に当時の厚生省と日本歯科医師会が「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」ということをスローガンを掲げ、始まった運動です。
「80」という数字は日本人男性と日本人女性の平均寿命を表し、「20」は硬い食べ物を満足して食べるために必要な歯の本数を表しています。「8020運動」と呼ばれる前は「一生自分の歯で食べよう」という呼びかけが行われていました。
年代別に日本人の歯の残存数を見てみると、2011年の調査データで、35歳~44歳は平均で28.1本、45歳~54歳は26.8本、55歳~64歳は23.2本、65歳~74歳は19.3本、75歳~84歳は14.2本、85歳以上は、なんと平均で8.4本しか残っていないのです。
歯への意識が高いアメリカやヨーロッパでも歯を残す取り組みを続けています。その中でもスウェーデンは70歳の平均残存歯数が「21本」と大きな効果を発揮しています。その理由は、一人一人の意識や、取り組み方に違いがあります。
まず一つ目に「予防歯科」という考え方を知っている人口が、日本は20.9%に対し、スウェーデンは59.6%もいます。そして実際に「予防歯科」に取り組んでいる人口が、日本は26.2%でスウェーデンでは69.3%もいるのです。その原因の一つとして、幼い頃に「歯医者さんは痛くて怖いところ」という意識が根付いてしまっているのかもしれません。歯医者に対する苦手意識を調査したところ、スウェーデンは2.6%に対し、日本は14.0%も苦手意識を持たれてる方がいるようです。
また、歯磨き以外にもデンタルフロスやデンタルリンス、歯間ブラシなどを使った日々のケアへの取り組みに対しても、日本は48.7%と少なくはない数字ではありますが、 スウェーデンでは、さらに上回る68.3%の方が日々丁寧なケアを心掛けているようです。
決してスウェーデンも昔から予防歯科への意識が高かったわけではなく、1970年代に国家プロジェクトとして啓発がスタートし、効果が表れ始めたと言われています。現在では歯が生える前の0歳からケアを行っているようで、このような取り組みが功を奏しているようです。
なぜ歯が抜けてしまうのか
実際には、歯そのものに寿命があるというわけではなく、歯並びや生活習慣などさまざまな理由が原因となり、ある一定の年齢で歯が抜けやすくなります。
そのさまざまな理由の中でも、歯が抜けてしまう原因で最も多く見られるのが「歯周病」です。歯が抜けてしまう人の約4割が歯周病だと言われています。歯周病は、歯を支えている顎の骨が溶け、最終的には歯が抜けてしまうこともある病気です。次に多いのが「虫歯」です。虫歯によって歯が失われる人の割合も全体の約3割と、非常に多いのが特徴です。
また、噛み合わせた際の衝撃も歯に大きな負担をかけてしまうため、歯を失う原因の一つと言われています。歯を食い縛るなど、繰り返し歯に負荷を与えることで歯が割れてしまうこともあります。食い縛りだけでなく、歯ぎしりや噛み合わせの悪さも歯に負荷が加わるため、年月が経つにつれて歯を失ってしまう原因や歯周病を進行させてしまう原因の一つになります。
その他にも、日常のストレスや暴飲暴食が、歯や歯を支えている歯茎に悪影響を与えてしまっています。摂取する栄養バランスが偏ると、抵抗力が落ち、歯周病を悪化させてしまいます。
8020を実現させるために
日本歯科医師会では、「いつまでも自分の歯で、自分の口から食事をとること」が、豊かに楽しく暮らしていくために最も大切なことであると考えています。
8020運動の達成率は、運動開始当初は7%程度(平均残存歯数4~5本)でしたが、2005年の厚生労働省の調査では、80歳~84歳の8020運動達成率が21.1%、また85歳以上だと8.3%にまで伸びました。厚生労働省の「健康日本21」では中間目標として8020運動達成率20%を掲げましたが、2007年に出された中間報告では、それを上回る25%を達成することが出来ました。その後、2017年6月に厚生労働省が発表した歯科疾患実態調査では、達成者が51.2%となりました。
地域の歯科医師会では、8020運動の一環として、歯科衛生士や保健師等と協力して行政とさまざまな活動を行っております。1歳6カ月児と、3歳児の歯科健診、予防活動や、保育園・幼稚園・学校・職場・地域での歯科健診、また休日の救急歯科診療、心身障がいを持った方への歯科保健活動や、在宅で寝たきりの高齢者を訪問し歯科保健活動をしたり、歯科保健教育や相談事業などといったさまざまな活動を行っています。
歯を失う原因で最も多いのが歯周病です。生活習慣病と言われるこの「病気」は、初期を含めると成人のおよそ80%以上の人が患っています(厚生労働省平成17年歯科疾患実態調査)。日頃の仕事や家事などの忙しさに任せて、“暴飲暴食”あるいは“不規則な生活”など、日常の生活習慣の乱れが歯周病につながりますので、日々のチェックが重要です。そして、「食べた後や寝る前には歯を磨く」といった基本的なことも忘れてはいけませんが、例えば、正しい歯磨きの方法や、歯磨きの際に併用すると良いオーラルリンス等の使い方など、かかりつけの歯科医師に相談してみてはいかがでしょうか。
いつまでも自分の歯で食事を取れるということは、年を重ねても自信に繋がりますし、日々の生活の中で豊かな気持ちを手に入れられる一つの大切な健康であると考えます。そのためには、個々の自覚が大事で、予防は非常に大切です。これらの全ては「やる気」から始まります。歯磨きなど毎日の手入れと併せて、口の中の衛生指導などを行っている大分県の歯科医院に定期的に通う習慣をつけてみてはいかがでしょうか。